港町として栄えてきた尾道、北前船の寄港地として全国各地から商人がやって来ていました。そんな船旅の疲れを癒す場所のひとつであったであろう新開は元々、遊廓だったという歴史があります。それこそが、この町の醸し出す艶やかな味わいの源泉なのかもしれません。
瀬戸内しまなみ海道の玄関口である尾道は、国内外の交流拠点として活気あふれる港街。
そんな尾道の中でも、特別この「新開(シンガイ)」は、かつては遊郭もあり、歓楽街として栄えた街だ。
活力溢れるいつもと変わらないはずの新開で、十七歳の水川ありさが消えた。
交友関係の幅が広く、誰からも親しまれた彼女の突然の失踪は、新開中のたくさんの地元民を悲しませた。
しかし、警察の必死の捜索も虚しく、時間だけが過ぎ、やがて捜査もその幕を閉じることとなる。
それと同時に、彼女がいない新開の日常も、当たり前になりつつあった。
結局のところ、彼女を本当に理解し想っていた人は、
彼女の友人と呼ばれた人達の母数に対しては圧倒的に少なかったのだ。
あなたは、そんな彼女の数少ない理解者の一人であり、
そうであるが故に、彼女の失踪をずっと忘れられない一人でもある。
あれから十年。
彼女が見つからないまま、新開のプロジェクト「Project, SHINGAI」のメンバーとして声がかる。
プロジェクトの詳細がまったくつかめないまま、メンバーの顔合わせを三日後に控えた夜、一通の手紙が届いた。
「見つけて下さい。新開にいます」
それは、十年前にいなくなったはずのありさからの手紙だった。
何かの悪戯か、偶然か。はたまた、本当にありさからなのか。
疑念を抱きながら、あなたは再び、新開に足を踏み入れることになった。